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2011年5月16日 (月)

〈午前十時の映画祭〉バンド・ワゴン

〈午前十時の映画祭〉バンド・ワ
監督:ヴィンセント・ミネリ
製作:アーサー・フリード
出演:フレッド・アステア、シド・チャリシー、オスカー・レヴァント、ナネット・ファブレー、ジャック・ブキャナン 他


 《アステアが自らのスタイルに別れを告げた映画》


 この映画はミュージカル映画の名作ではあるが、MGMミュージカルとしては全盛期をとっくに過ぎており、主流となるダンススタイルの変遷を、ベテランのダンサーと若手ヒロインのダンスを織り交ぜて描いたものである。この時すでに50歳を過ぎていたアステアが、まるで自らをそのまま投影させたかのような時代遅れの役者を演じ、既に老境に達していたダンサーでコメディアンのジャック・ブキャナンと共に哀愁を漂わせる。そこにシド・チャリシー扮する若手バレリーナ(彼女がメイン級の役を演じるのはこの映画が初)の新しいダンスが融合、アステアとの夜の公園でのさり気ないダンスシーンに、それが見事に表されている。


 もっとも、アステアとチャリシーのダンスがさらに完成されて現われてくるのは、共演2作目でキャサリン・ヘップバーンの「ニノチカ」をミュージカル化させた「絹の靴下」であり、僕は音楽やダンスは「絹の靴下」の方が好きなのだが、お話の方はジーン・ケリーの「雨に唄えば」同様、あちらがサイレントからトーキーへと移り変わる映画業界のドタバタを描いているのに対し、こちらは当時の舞台劇製作の舞台裏を面白可笑しく描いていて楽しい。


 前半はアステアというよりブキャナンの映画。もちろんダンスシーンはアステアの方が多く、靴磨きの兄チャンとのダンスは本作前半の名場面といっていいのだが、コメディー部分はほぼ全部ブキャナンの役割。特に、スポンサー達に劇の内容を教える場面は笑える。


 後半、出演者の軋轢からギクシャクし始め劇は失敗、アステア扮するトニーの仕切りで、変更された脚本を元に戻し再出発するのだが、前述の公園でのダンスシーンを含め、クライマックスの“ガール・ハント”まで、シド・チャリシーの“500万ドルの脚線美”のキレイなこと! お2人のダンスのうまさに加え、そういうところを観て楽しむのも、いいかなぁと思った。


 ちなみに映画のタイトルであるバンド・ワゴンはアステアが出演した、これとは別の舞台劇から付けられたようだが、本来は行列の先頭の楽隊車の事であり、「時流に乗る」などという意味で、経済学等で使われる言葉である。残念ながらMGMミュージカルはこの後、この言葉どおりにはならず、衰退していく事になる。


 この作品も確かに素晴らしいのだが、やはりアステアといえばお相手は何といってもジンジャー・ロジャース。やっぱり「コンチネンタル」('34)とか「有頂天時代」('36)なんかが観たかったなぁ!


私の評価…☆☆☆☆★

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