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2012年5月 1日 (火)

アーティスト

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劇場:TOHOシネマズ二条
監督:ミシェル・アザナヴィシウス
出演:ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョ、アギー(犬)、ジョン・グッドマン、ジェームズ・クロムウェル、ミッシー・パイル、ペネロープ・アン・ミラー、マルコム・マクダウェル、ビッツィー・トゥロック、ベス・グラント、エド・ローター、ジェン・リリー、ニーナ・シマーシュコ、ジュエル・シェパード、ベイジル・ホフマン、ベン・カーランド、ケン・ディヴィシャン 他


 《CG全盛の時代に鮮やかに甦った無声映画》


 今年度の米アカデミー賞で、作品賞等を競った「ヒューゴの不思議な発明」同様、映画“愛”に満ち溢れた作品。当初からサイレント(無声)映画として企画されたものではあるが、映像は撮影時はカラーで撮られており、後に映像から色差(カラー)信号を抜く形でモノクロへと変更されたようである。


 1927年、アメリカ・ハリウッド。サイレント映画界きっての大スター、ジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)は、共演した愛犬と共に新作の舞台挨拶で拍手喝采を浴びていた。映画館の前も大混乱で、若い女性ファンがジョージを突き飛ばしてしまう。しかし優しく微笑むジョージに感動した彼女は、大胆にも憧れのスターにキスをする。


 翌日の新聞の一面を飾ったこのキス写真に、不機嫌なのはジョージの妻(ペネロープ・アン・ミラー)。写真の彼女の名前はペピー・ミラー(ベレニス・ベジョ)といい、未来のスターを目指す新人女優だった。オーディションを受けに映画会社「キノグラフ」にやってきた彼女は、愛らしい笑顔とキュートなダンスで、ジョージ主演作のエキストラ役を獲得。撮影後、楽屋を訪ねてきたペピーにジョージは、「女優を目指すのなら目立つ特徴がないと」と、アイライナーで唇の上にほくろをつける。その日を境に、ペピーの快進撃が始まった。踊り子、メイド、名前のある役、そして遂にはヒロインに。その口元にはいつもチャーミングなほくろが描かれていた…。


 2年後、映画界にセリフのあるトーキー映画が登場。サイレント映画こそ芸術、自分は芸術家だと主張し過去の栄光に固執するジョージは、キノグラフ社のジマー社長(ジョン・グッドマン)と決別するが、数か月後、自ら監督と主演を務めたサイレント映画は大コケ。心配したペピーがジョージを訪ねるも、心を閉ざしたジョージは彼女を追い返すのだった…。


 それから1年。ペピーはトーキー映画の新進スターとして大人気を誇っていた。一方、妻に追い出されたジョージは、献身的な運転手クリフトン(ジェームズ・クロムウェル)の給料すら払えなくなり、彼を解雇、オークションで自らの成功の思い出の品々を売り払わざるをえなくなる。それを知ったペピーは、こっそりと全てを買い取りジョージの孤独な背中に涙するが、時代は容赦なく2人を引き裂くのだった。酒に溺れる毎日を送るジョージは、自分に絶望し、唯一の財産であるフィルムに火を放つ。愛犬アギーの活躍で救出されたジョージのもとへ駆けつけたのは、変わらぬ愛を抱くペピーだった。ジョージは絶望の淵を彷徨うが、ペピーには希望があった。彼女には「銀幕のスター」ジョージを復活させる、ある“名案”があったのだ…。


 この映画の舞台となっているのは1920年代の後半。というわけで、この映画自体もその時代に合わせて、当時のスクリーンサイズである、今はもう滅多にお目にかからないスタンダードサイズ(縦横比1:1.37 サイレント映画時代のスクリーンサイズは1:1.33だがそれは恐らく今は無い)で製作されている。今のシネコンにはスクリーンにこのサイズ設定が無いため、ビスタサイズの左右に黒枠が入る形で上映されている。これだけでも、徹底的なこだわりを持って作られていることが十分にわかる。しかも、カメラにズームレンズを使っていない。これも1920年代当時はまだ無かったからで、この映画を作るために300本もの無声映画を観まくって研究したという監督の、映画への“愛”が見て取れる。


 また、様々な古きよきハリウッド映画にオマージュを捧げているとあって、珠玉の名場面の宝庫である。特に、ジョージに恋するペピーが、彼のタキシードに手を通して恋心を表す場面は、本作の中でも最も印象に残る名場面だ。チャップリンの映画を意識したといわれる音楽も素晴らしい。やはりサイレント映画において音楽というものは、とても重要な役割を示しているというのがよく分かる。


 サイレントからトーキーへ、そして物語上ではある事から落ち目のジョージ(サイレントの象徴)とスターダムに伸し上がったペピー(トーキーの象徴)が再会し、ミュージカル映画の誕生へと持っていく展開には思わず唸ってしまった。いやぁ〜、アメリカの映画人がアカデミー賞に票を入れたのも、わかる気がする。本当に素晴らしい映画だった!


私の評価…☆☆☆☆☆

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コメント

「アーティスト」、あれは全くの創作のハナシなのですか?
キノグラフ社というのは、実在の製作会社だったのでしょうか。
もしおわかりでしたら、お教えください。

投稿: ふくしま みつお | 2012年6月22日 (金) 21時29分

一応物語は架空の話ですが、主人公のモデルはダグラス・フェアバンクスJr.やフレッド・アステアなど、複数いるようです。映画会社の名前も架空のはずですが、MGM(か、その前身会社?)あたりがモデルなのかなぁと思います。

投稿: マティ | 2012年6月23日 (土) 01時13分

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