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2013年8月

2013年8月31日 (土)

終戦のエンペラー

終戦のエンペラー
終戦のエンペラー
劇場:MOVIX京都
監督:ピーター・ウェーバー
原案:芥川保志
原作:岡本嗣郎「陛下をお救いなさいまし 河井道とボナー・フェラーズ」
主題歌:米良美一「Can You Hear?」
出演:マシュー・フォックス、トミー・リー・ジョーンズ、初音映莉子、西田敏行、羽田昌義、片岡孝太郎、伊武雅刀、夏八木勲、中村雅俊、火野正平、桃井かおり 他


 《この時期だから観られる、考えさせられる映画》


 第二次世界大戦終戦直後の戦後処理の史実を元に、フィクション交えながら描く映画。主要な撮影はニュージーランドで行われ、勿論、日本国内での撮影もされている。初めて皇居内の撮影も許可され、敢行された。


 1945年8月30日、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)の司令官としてダグラス・マッカーサー(トミー・リー・ジョーンズ)が日本に上陸。彼は日本文化に精通している部下ボナー・フェラーズ(マシュー・フォックス)に、太平洋戦争の真の責任者を探し出すという極秘任務を下す。僅か10日間という期限の中、懸命な調査で日本国民ですら知らなかった太平洋戦争にまつわる事実を暴きだしていくボナー。遂に最大ともいうべき国家機密に近づくが、彼と敵対するGHQのグループや日本人たちの一団が立ちはだかる…。


 これもまた、「風立ちぬ」と同じく、史実の中にフィクションを混ぜて描いたものである。異国の文化というのはわかりにくいもので、日本の文化をヘンなふうにとらえたアメリカ映画は多いのだが、これはまだマシな方か。フィクションGHQ将校と日本人女性との恋物語は、本筋とはあまり関係ないので少々退屈だが、史実だけを描いたのではドラマ性が失われ、娯楽作品としての映画ではなくなってしまうので、観客を感情移入させるために必要だったのだろう。


 結果として無難にまとまっているのはいいのだが、その分印象は薄くなった。日本人キャストが頑張っているのは勿論いいことなのだが、やっぱり特に印象に残るのは夏八木勲か。残念ながら彼の遺作になってしまい、撮影時にはかなり病も進行していたとは思うのだが、出番は少ないものの、演技からは気迫が十分に伝わってきた。


 ちなみに、「風立ちぬ」を観にいった時も感じたが、やはりこういう映画の客層は年配の人が中心である。これは大変残念なこと。勿論悪いわけではないのだが、こういう映画だからこそ、またせっかく夏休みに公開しているからこそ、戦争を知らない世代、特に10〜20代の若い世代に観てもらって、当時の日本や世界のこと、そして(皮肉を込めて)現代のアメリカ(笑)を感じ取ってほしいのである。TVドラマの延長線上の映画や、ネットで酷評されている懐かしアニメの実写版を頭カラッポにして観るのもいいのだが(←全部自分がやったこと)、やっぱり時にはじっくり考えるのもいいのだ。


私の評価…☆☆☆★

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2013年8月29日 (木)

ベルリンファイル

ベルリンファイル
劇場:MOVIX京都
監督:リュ・スンワン
出演:ハ・ジョンウ、ハン・ソッキュ、リュ・スンボム、チョン・ジヒョン 他


 《硬軟演じ分けられる女優になりつつあるチョン・ジヒョン》


 ベルリンを舞台に、北朝鮮と韓国のスパイによる戦いが繰り広げられるサスペンス・アクション。


 アラブ組織との武器取引現場を韓国情報院の敏腕エージェント、ジンス(ハン・ソッキュ)に察知され、辛くもその場から脱出した北朝鮮諜報員ジョンソン(ハ・ジョンウ)。なぜ、このトップシークレットが南に漏れたのか? まもなく、北の保安監視員ミョンス(リュ・スンボム)から、妻ジョンヒ(チョン・ジヒョン)に二重スパイ疑惑がかけられていると知ったジョンソンは、祖国への忠誠心と私情の板挟みになり苦悩を深めていく。


 しかしジョンソンは、まだ気づいていなかった。すでに彼自身までが、恐るべき巨大な陰謀に囚われていたことに。CIA、イスラエル、中東そしてドイツの思惑も交錯し世界を巻き込んだ戦いが「陰謀都市ベルリン」で始まる。生き残るのは果たして…。


 韓国のスパイ映画って、何かどれを観ても同じような物に見えてしまうのだが。


 本作の場合、久しぶりにハン・ソッキュが諜報員役で出ているので、「シュリ」の現代版というか現在形として観れば、一番観やすいのではないかと思う。


 大まかに言えばこの映画が描いていることは北朝鮮内部の、ある大使館の利権を巡る権力闘争という、ただそれだけの話なのだが、そこにアラブやイスラエル、CIAまでも巻き込ませて、話を膨らませ、映画的なスケール感を出させている。この“味付け”が実に絶妙だ。


 追いつ追われつのアクションは使い古されたもので、新鮮味は無いが、ビルの壁をベランダ等を利用して綱1本で降りていく場面は緊迫感があり、アクション映画として十分楽しめる。


 今作でビックリしたのは、今まで「猟奇的な彼女」等で活発な役柄のイメージがあったチョン・ジヒョンが、今回はかなり抑えた演技で新境地を開いていることである。先に公開された「10人の泥棒たち」ではコミカルな役を演じており、この両方を巧みに演じ分けられる俳優になったら、ちょっと面白い存在になっていくのかな。韓国映画の中では好きな女優の1人なので、今後が楽しみになってきた!


私の評価…☆☆☆☆

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2013年8月26日 (月)

風立ちぬ

風立ちぬ
風立ちぬ
劇場:TOHOシネマズ二条
監督・脚本・原作:宮崎駿
音楽:久石譲
主題歌:荒井由美「ひこうき雲」

声の出演:堀越二郎…庵野秀明、里見菜穂子…瀧本美織、本庄…西島秀俊、黒川…西村雅彦、カストルプ…スティーブン・アルパート、里見…風間杜夫、二郎の母…竹下景子、堀越加代…志田未来、服部…國村隼、黒川夫人…大竹しのぶ、カプローニ…野村萬斎 他


 《こういう映画はやはり家族で観て感想を言い合ってほしい》


 宮崎駿監督自身が2009年に発表した漫画を映画化。零式戦闘機を設計した実在の人物、堀越二郎の生涯をフィクションも交えて描く。


 零戦の設計者・堀越二郎とイタリアの先輩、ジャンニ・カプローニとの同じ志を持つ者の時空をこえた友情。幾度もの挫折をこえて少年の日の夢に向かい力を尽くすふたり。


 大正時代、田舎に育ったひとりの少年が飛行機の設計者になろうと決意する。美しい風のような飛行機を造りたいと夢見る。


 やがて少年は東京の大学に進み、大軍需産業のエリート技師となって才能を開花させ、遂に航空史に残る美しい機体を造り上げるに至る。「三菱A6M1」、後の海軍零式艦上戦闘機所謂「零戦」である。1940年から3年間、零戦は世界に傑出した戦闘機であった…。


 夏休み映画なので、家族連れで観に行ったという人も多いとは思うが、これは子供向きではなく、むしろ大人が楽しむ映画なのではないかと思う。


 今回は実在した人物を、実話とファンタジーつまりフィクションを混ぜて描いている。宮崎アニメが実在の人物を描くこと自体が初めてであり、このためなのかいつもの宮崎アニメとは少し異質な感じがする。


 ストーリーも、今までの作品と比べれば、至って平凡。主役の庵野秀明の素人っぷりは、あえて狙ったのかもしれないが、あまりストーリー的に盛り上がる部分も特になく、淡々と描かれる。


 ちなみにこの映画は今、映画の本質的な部分とは違うところでマスコミに取り上げられ、話題となっているが、この映画でのタバコの描かれ方は、特に重要視されるものではない。どこぞの禁煙学会がやいのやいのと言っているようだが、恐らく子供どころか誰もそんなところに注目して観てはいないだろう。この映画が描いているのは、戦闘機を造った者の目を通して見た戦争であり、日本の姿なのだから。もしタバコの描写に対してどーたらこーたら言うのであれば、外国映画と同じようにエンドロールに注意書きを入れておけばいいのである。ジブリは現時点で公式見解を述べていないようだが、マスコミが流すことによって“無料の宣伝”ができている(イヤラシイ話だが)ので、恐らくこのまま上映は続くだろうし、それが当たり前だと僕は思う。


私の評価…☆☆☆☆★

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2013年8月23日 (金)

妖魔伝 〜レザレクション〜

妖魔伝 〜レザレクション〜
妖魔伝 〜レザレクション〜
劇場:シネマート心斎橋(関西では京都・みなみ会館でも8/31より1週間限定ロードショー決定!)
監督:烏爾善
原作:蒲松齢「聊斎志異」より
音楽:石田勝範
主題歌:ジェーン・チャン「画心」(「画皮2」ヴァージョン)
コンセプトデザイン:天野喜孝
出演:周迅、趙薇、陳坤、楊冪、馮紹峰 他


(写真上:シネマート六本木&心斎橋他で順次上映「2013夏の中華大傑作映画まつり」チラシ 写真下:「画皮2」中国版ポスター)


 《ヴィッキー・チャオがメチャクチャ格好いい「画皮」続編》


 各地で順次開催予定の【2013夏の中華映画大傑作まつり】の中の1本。日本版タイトルから、1988年製作で日本でも公開された林小樓(リン・シャオロウ)主演「妖魔伝」のリメイクかと思われるかもしれないが、そうではない。この映画の原題は「画皮2」。そう、日本では昨年公開された「画皮 あやかしの恋」(2008年・中国)の続編である。主題歌は1作目と同じだが新アレンジとなり、前作では日本公開版のみ倉木麻衣によるカバーバージョンだったが、今回はオリジナル版が流れている。


 あの事件から500年後、狐の妖魔、小唯(周迅=ジョウ・シュン)は、人間を救った罪で妖界からの懲罰を受け、氷地獄へと封印されていた。彩雀の妖魔、雀児(楊冪=ヤン・ミー)によって救出された小唯だったが、もう一度美貌を保ち妖魔として転生するには、純真な者が自らの意思で彼女に捧げる心臓が必要だった。妖界からの逃亡の過程で、小唯は靖公主(趙薇=ヴィッキー・チャオ)と会う。彼女はまだ少女の頃、熊に襲われ、美しい顔に傷を負って以来、黄金のマスクを着けていた。公主を守れなかった責任を問われた彼女の護衛である将軍、霍心(陳坤=チェン・クン)は、西域へと流される。霍心への想いを断ち切れない靖公主は、彼を追う。小唯は彼女に近づき、失われた美貌と霍心の愛を取り戻したい公主の心につけ入り、妖魔の力を取り戻そうとするが…。


 一応、続編とは銘打っていて、ジョウ・シュンとヴィッキー・チャオ、チェン・クンの3人は前作から続投しているが、前作と同じ小唯に扮するジョウ・シュン以外は別キャラを演じており、前作からの繋がりは殆どない。原作「聊斎志異」からは「画皮 あやかしの恋」の項でも書いたように、「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」(1987年・日本公開は1989年)という傑作が作られているが、こちらもシリーズ化された時に、主演のジョイ・ウォンとレスリー・チャンは続投したが、役は変更されオリジナルのストーリーになっていた。それを踏襲した訳ではないだろうが、この映画も同じ道を進むことになった。


 本作は中国ではデジタル3D映画として公開されている(日本では2Dのみ)。あまり3Dを意識した場面は無いがCGが多用され、前作よりもさらにファンタジー色が強い。そのCGを含めたデザインを、アニメ「科学忍者隊ガッチャマン」や、ゲーム「ファイナル・ファンタジー」シリーズのキャラクター・デザイン等で有名な、日本の天野喜孝が担当しているため、ほぼ全編にわたって映像がとてもきれいである。特に冒頭での妖狐・小唯が氷の世界から復活するシーンは幻想的だし、右目下に傷を負っているのを隠すように、金の仮面で顔半分を覆った公主が馬に乗り駆けていく場面は格好いい。ジョウ・シュンとヴィッキー・チャオは設定上、まるで「フェイス・オフ」のニコラス・ケイジとトラヴォルタのように途中で役が入れ替わるのだが、2人共巧みに演じ分けていて上手い。この2大美人女優を軸にしたのは正解だ。


 前作はサイド・ストーリーも充実していたが、今回も彩雀の妖魔・雀児と、雀児を妖魔と知りながら助けた馮紹峰(=ウィリアム・フォン)扮する頼りない魔道士の切ない恋物語が描かれる。魔道士を想うあまり、人間になりたいと願う雀児が可愛い。雀児役のヤン・ミーは、ドラマ「美人心計」などに出演している今、中国で最も人気のある若手女優の1人。身長168cmと背は高いが愛らしいルックスで、日本でも公開作が増えれば人気が出るだろう。出演しているドラマ等はDVDでチェックしたいところだ。


 ちなみに監督の烏爾善は、映画に関してはまだ“ペーペーの新人”である(!)。荒削りな面はあるが、ストーリーが破綻することなく最後を迎えるので、非常に面白い。昨今の社会情勢もあって、中国や韓国の映画が、日本でなかなかかかりにくくなっているが、こういった面白い映画はたくさんあるのだから、できればスクリーンで、映画ファンの目に触れる機会をもっと増やしてほしいものである。


私の評価…☆☆☆★

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2013年8月17日 (土)

〈新・午前十時の映画祭〉タワーリング・インフェルノ

タワーリング・インフェルノ
劇場:TOHOシネマズ二条
監督:ジョン・ギラーミン
製作・アクションシーン監督:アーウィン・アレン
原作:リチャード・マーティン・スターン「ザ・タワー」、トーマス・N・スコーシア、フランク・M・ロビンスン「ザ・グラス・インフェルノ」
音楽:ジョン・ウィリアムズ
主題歌:モーリン・マクガヴァン「We May Never Love Like This Again」
出演:スティーブ・マックイーン、ポール・ニューマン、ウィリアム・ホールデン、フェイ・ダナウェイ、フレッド・アステア、スーザン・ブレークリー、リチャード・チェンバレン、ジェニファー・ジョーンズ、O・J・シンプソン、ロバート・ヴォーン、ロバート・ワグナー、スーザン・フラネリー、シーラ・アレン、ノーマン・バートン、ジャック・コリンズ、ドン・ゴードン、フェルトン・ペリー、グレゴリー・シーラ、アーニー・F・オルサッティ、ダブニー・コールマン、ノーマン・グラボウスキー、ロス・エリオット、オラン・ソウル、カリーナ・ガワー、マイク・ルッキンランド、キャロル・マケヴォイ、スコット・ニューマン、ポール・コミ、ジョージ・ウォレス、ウィリアム・バセット、ジョン・クロウフォード、エリック・L・ネルソン、モーリン・マクガヴァン、ジョン・モイオ、ジェニファー・ローズ、ウィリアム・トレイラー 他


 《'70年代パニック映画の中でも最高傑作》


 1974年製作(日本では翌年公開)の映画。'70年代は様々なパニック映画が量産されたが、この映画はその中でも最高傑作といわれる作品。今では珍しくなくなったが、アメリカ映画史上初のワーナーと20世紀FOXという2大メジャー配給会社による共同製作(当初は別々の原作を映画化する企画だったが内容と公開時期が似通っていたので1つにまとめられた)で、両社に所属していた人気俳優が大挙出演する賑やかなオールスター映画となった。ただし、配給権がアメリカではFOX、それ以外の海外ではワーナーと分担されたため、日本ではなかなかリバイバル上映されにくいものとなっている。


 サンフランシスコの空にそびえ立つ138階建ての世界一高い超高層ビル“グラス・タワー”が落成の日を迎えた。設計者のダグ・ロバーツ(ポール・ニューマン)とオーナーのジム・ダンカン(ウィリアム・ホールデン)は、屋上に立って眼下に広がる市の光景を見下ろしていた。工事主任のギディングス(ノーマン・バートン)と打ち合せを済ませたロバーツは婚約者のスーザン・フランクリン(フェイ・ダナウェイ)と久しぶりに2人だけの時間をもった。惨事は、その時既に始まっていた。“グラス・タワー”の地下室にある発電機が故障したため主任技師のキャラハンが予備の発電機を始動させたとたんショートし、81階にある物置室の配電盤のヒューズが火を発し、燃えながら床に落ちた絶縁体の破片が発動機のマットを燻らせ始めたのだ。保安主任ハリー・ジャーニガン(O・J・シンプソン)の緊急報告を受けたロバーツは配線工事が自分の設計通りに行われていないのに憤然として、落成式の一時中止をダンカン企業の広報部長ダン・ビグロー(ロバート・ワグナー)
に申し入れたが、ダンカンは拒絶した。しかしその時81階では火が大きく拡がりはじめていたのだ。ロバーツはダンカンの義理の息子であるロジャー・シモンズ(リチャード・チェンバレン)に会い、ビルの配線工事を担当した彼の配慮不足を責めたが、後の祭りだった。一方、火災の発生をまだ知らない“グラス・タワー”の借間人たちは落成式パーティの準備に浮き足立っていた。1階から80階までがオフィス用、それから上は住宅用に作られたこのビルには、既に様々な人が住み着いていた。


 例えば90階に住むハリー・クレイボーン(フレッド・アステア)は株専門の詐欺師だ。彼は同じ階に住む富豪未亡人リゾレット・ミューラー(ジェニファー・ジョーンズ)に眼をつけ、うまく話をまとめて一儲けしようとしていた。外部からの招待客もそうそうたる顔触れで、上院議員ゲイリー・パーカー(ロバート・ヴォーン)などがいた。入口のリボンが切られると、人々は135階のプロムナード・ルームへ直行し、全てのライトが灯され“グラス・タワー”の全容は夜空にクッキリとあらわれた。だが出火した火は拡がり、ロバーツは消防署に急報した。連絡を受けた消化隊は隊長のマイケル・オハラハン(スティーブ・マックイーン)の統率のもと、程なくビルに到着。彼は直ちにロバーツと“グラス・タワー”の設計図を検討し、79階に司令センターを設置、ダンカンに緊急避難を命じた。火が他に移り始めてエレベーターにも危険が迫っていることを察知したオハラハンは展望エレベーターを利用するよう命じたが既に大混乱が始まっていた。地上からの救援だけで
は間に合わないことを知ると、オハラハンは海軍のヘリコプターに空からの救援を依頼したが、強風で近づくことができず、辛うじて近づいた一機もビルに激突し炎上。“グラス・タワー”は今や完全にひとつの巨大な溶鉱炉と化していたのだ…。


 今回の「新・午前十時の映画祭」の中で、一番観たかったのが、このパニック巨編である。実はこの映画、この映画祭の第1回をやる時に、インターネットによるリクエスト投票が行われていたのだが、そこでもベスト20位内に入り上映が待たれていたのだ。


 ただ、やはり上記の理由のため、権利関係がなかなか取れなかったのか、上映が見送られてきた。それがデジタルになって遂に実現。これは嬉しい事である。


 当時を代表するパニック映画は他にも「大空港(エアポート)」シリーズや、最近になってリメイクされた「ポセイドン・アドベンチャー」と「サブウェイ123」、「大地震」等があるが、豪華な出演者や作品の完成度といった点では本作が群を抜いている。


 何てったって、当時としては殆ど有り得なかった、ライバル映画会社所属の俳優たちが同じ画面で共演している(主演級の俳優1人がレンタル契約で他社作品に出演するケースは時々あったが)のが観られる訳である。例えばFOX所属のポール・ニューマンとワーナー所属のスティーブ・マックイーンとの夢のW主演。そのニューマンとこれまたワーナー所属のフェイ・ダナウェイが恋人同士の設定で、しかもキスシーンまであるという、ファンにとっては最高に贅沢な映画である。


 また、オールスター映画というと、昔の東映時代劇にもそういう類のものがあったが、製作者を悩ませるのが、スター俳優の扱われ方。本作は「グランドホテル形式」と呼ばれる、メインキャラクターそれぞれにスポットを当てる方法がとられ、スター俳優には必ず1シーンは名場面が割り振られた。


 数ある名場面の中でも僕が好きなのは、やっぱりミュージカル映画好きなのでアステア御大のラストシーンかな。この映画は実質的にアステアの遺作になるのだが、保安主任ハリーからリゾレットが飼っていて逃げのびた猫を渡され、彼女の死を知る場面は切ない。


 オハラハンとダグの最後のやりとりも心に残る。オハラハンの最後のセリフが現実と化している今、人命を軽視するようなものを作ることは、当たり前だがやってはならないのだ。


 これを機に津波による客船の転覆を描いた「ポセイドン・アドベンチャー」や、緊迫の展開の中、お婆ちゃん詐欺師の行動が面白くて、観るものをホッとさせてくれる「大空港」もスクリーンで観たいんだが…。上映される機会はあるのかなぁ?


私の評価…☆☆☆☆☆

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2013年8月14日 (水)

3D 飛びだす悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲

3D 飛びだす悪魔のいけにえ
劇場:TOHOシネマズ二条
監督:ジョン・ラッセンホップ
原作&キャラクター創造:キム・ヘンケル、トビー・フーパー
音楽:ジョン・フリッゼル
出演:アレクサンドラ・ダダリオ、ダン・イェーガー、トレイ・ソングス、タニア・レイモンド、トム・バリー、ポール・レイ、ビル・モーズリー 他


 《こんなにいい加減なもので、いいのかね》


 「悪魔のいけにえ」(1974年)シリーズとそのリメイク版「テキサス・チェーンソー」(2003年)シリーズを合わせた通算7作目の映画。このうちオリジナル版「悪魔のいけにえ」シリーズは今までに4作あるが、この映画はそのオリジナル版1作目の正統派続編という位置付けである。そのため、オリジナル版2作目の出来事は無視された。ああ、ややこしい(笑)。


 狂気に満ちた猟奇食人一家が、村人たちに惨殺されてから20年後。ヘザー・ミラー(アレクサンドラ・ダダリオ)の元に一通の手紙が届く。その手紙には財産を相続するよう書いてあり、覚えのないヘザーは両親を問い質すと彼女は実の娘ではないことを打ち明けられる。突然の告白に呆然とするヘザーであったが、自身の出生の秘密が隠されたテキサス州ニュートへと向かう決意をする。元々友達とバカンスを予定していたこともあり、友人たちは皆その旅に付き合うことになる。途中、ガソリンスタンドでヒッチハイクをする男を同乗させ、5人の男女一行は相続される大豪邸へと辿り着く。その大豪邸を見て歓喜する5人は早速パーティを始めるが、誰もそれが地獄への入口と気付く者はいなかった…。


 本作のファーストシーンはオリジナル版のラストから1時間後、村の若者らが猟奇殺人一家を皆殺しにするシーンから始まる。その中で1人の赤ん坊が難を逃れ、引き取られていく。それが本作のヒロインなのだが、映画はその彼女が自身の出自を知り、その運命をどう受け入れていくかを、残酷描写満載で描いていく。


 単純なスプラッターというだけでなく、村人との対立や血の因縁を絡めて描いていくので、何でもかんでもチェーンソーで切り刻んでいたレザーフェイスも今回は切れない存在、つまりはウィークポイントのようなものが出てくるのである。観ていくうちにこれは「13日の金曜日 完結編(第4作)」にちょっと似ているなと思った。あれは、ジェイソンが絶対に殺せない存在である子供が出てきたのだが、ジェイソンの子供の頃に因縁がある理由付けが先にしてあったため、一旦そこでシリーズを締めるのに用意された設定だった。


 ただ「13日の金曜日」と「悪魔のいけにえ」は、どちらも殺人鬼キャラクターのモデルは同じエド・ゲインなのだろうが、ストーリーの性格は似て非なるものである。はたしてこのシリーズに“家族愛”は必要なのだろうか。また、本来の善と悪を逆転させているような構図もいい加減すぎる。ラストの展開にもちょっとびっくりしたが、本当にあれでいいのか? まぁ、あの娘の理性が吹っ飛ばない限り、封印は解かれないだろうが。それにしても、邦題の副題はヘンである。こんな邦題つけたヤツこそレザーフェイスにブッタ斬ってもらいたい。


 ちなみにこのシリーズ、今度はリメイク版シリーズの3作目が作られることはすでに決まっている。どういった内容になるのかは分からないが、くれぐれもファンを戸惑わすことはやらないように。


私の評価…☆☆

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2013年8月 9日 (金)

サイレントヒル:リベレーション 3D

サイレントヒル:リベレーション
サイレントヒル:リベレーション
劇場:T・ジョイ京都
監督:マイケル・J・バセット
音楽:山岡晃
出演(吹替版声優 ※判明しているもののみ):アデレイド・クレメンス(福田彩乃)、キット・ハリントン(浪川大輔)、ショーン・ビーン(山野井仁)、キャリー=アン・モス(田中敦子)、マルコム・マクダウェル(石田太郎)、マーティン・ドノヴァン(大塚芳忠)、ラダ・ミッチェル(渡辺美佐)、デボラ・カーラ・アンガー(定岡小百合)、エリン・ピット(釘宮理恵)、ジェファーソン・ブラウン(咲野俊介)、ミルトン・バーンズ(魚建)、ヘザー・マークス(種田梨沙)ロベルト・カンパネラ、ピーター・アウターブリッジ(GACKT) 他


 《やっぱりシリーズものは監督が変わればダメになる》


 コナミから発売されたホラーゲーム「サイレントヒル」の映画化で、2006年にゲーム版の1作目をもとに製作・公開された「サイレントヒル」の続編。ゲームの方もシリーズ化はされているが、ゲーム版の「2」は1作目との繋がりがないため、本作はゲーム版の「3」のストーリーをもとに製作された。


 18歳の誕生日を迎えようとしているヘザー・メイソン(アデレイド・クレメンス)の人生は、他の同世代の女の子たちとはまったく違っていた。幼い頃の記憶がない彼女は、父親・ハリー(ショーン・ビーン)に守られるようにして各地を転々と移り住み、夜ごと「サイレントヒル」という謎の街で、「何か」に追われる悪夢にうなされているのだ。


 そんなある日、父親が不可解な失踪を遂げ、自宅の壁には「サイレントヒルに来い」という血の文字が残されていた…。


 やがて現実世界からスリップするように、ヘザーが不気味な深い霧と静寂に包まれたサイレントヒルに足を踏み入れると、突然鳴り響いたサイレンを合図に街は闇に飲み込まれ、この世のものとは思えない「何か」が姿を現す。


 それでも勇気を奮い起こし、父親を捜し出すため迷宮の奥深くへと身を投じたヘザーは、想像を絶する自らの出生の秘密、そしてサイレントヒルの呪われた真実を探り当てていくのだった…。


 前作は一応ヒットはしたものの、興行収入としてはイマイチだったせいか、この続編は製作費が前作の約半分に圧縮されてしまった。さらに監督も変わっているので、前作とはかなりテイストも変わっている。


 それに、前作の10年後を描くということで、前作では準主役にすぎなかった娘を主役に昇格させて描いているが、前作のあらすじがどこにも描かれていないため、この続編から観始めた人にとっては、ヒロインがなぜ悪夢にうなされるのか、なぜ行方不明の母(実は前作のヒロイン)の幻影が現れるのかといった、前作を観ていれば誰でも分かるものが、殆ど説明されていないという、実に不親切なものとなっており、たとえ前作を観ていて、その辺は分かっていたとしても、ストーリーは不出来である。


 製作費が半減した事で、前作で印象的だった、まるで映画「ミスト」のような、何が出てくるか分からない霧の街の不気味さも、殆ど表現しきれていない。元のゲーム版のストーリーと同期する部分はもちろんあるので、辛うじてその部分で映画のクオリティーが保たれているようなものだ。ちなみに、もし今回と同様のパターンで続編が作られるならば、次回はゲーム版「4」の内容となり、この映画のラストに出てきたトラック野郎トラヴィスが主役になるのかも。すでにゲーム版から変わっている設定も多いのだが、どんな展開を見せるのだろうか。少なくとも、監督だけは元に戻ってほしい。


私の評価…☆☆★

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2013年8月 8日 (木)

ワイルド・スピード EURO MISSION

ワイルド・スピード EURO MISSION
ワイルド・スピード EURO MISSION
ワイルド・スピード EURO MISSION
劇場:TOHOシネマズ二条
監督:ジャスティン・リン
音楽:ルーカス・ビダル
出演(吹替版声優 ※判明しているもののみ):ヴィン・ディーゼル(楠大典)、ポール・ウォーカー(高橋広樹)、ドゥエイン・ジョンソン(小山力也)、ミシェル・ロドリゲス(甲斐田裕子)、ジョーダナ・ブリュースター(園崎未恵)、タイリース・ギブソン(松田健一郎)、クリス“リュダクリス”ブリッジス(渡辺穣)、サン・カン(川島得愛)、ガル・ガドット(東條加那子)、エルサ・パタキー(坂井恭子)、ルーク・エヴァンス(東地宏樹)、ジーナ・カラーノ(林真里花)、ジョン・オーティス(後藤哲夫)、シェー・ウィガム(丸山壮史)、ジェイソン・ステイサム(山路和弘) 他


 《過去作に繋がるハチャメチャな前日譚》


 人気シリーズ第6弾。ただし、時間軸としては現時点で5作目と3作目の間ということになる。これは3作目の「〜X3 TOKYO DRIFT」が製作時の都合から、2作目までとは別次元のものとして作られた経緯があるためで(故にW主演であるはずのポール・ウォーカーが出演せずヴィン・ディーゼルがカメオ出演しているのみである)、この6作目は3作目の前日譚となる。


 逃亡生活を続けていたドミニク(ヴィン・ディーゼル)の前に、宿敵であるFBI捜査官ルーク(ドゥエイン・ジョンソン)が現われる。ルークはヨーロッパを拠点にスケールの大きな犯行を繰り返す国際的犯罪組織を追跡しており、ドミニクに組織壊滅への協力を要請する。更に、組織には死んだはずの恋人、レティ(ミシェル・ロドリゲス)が関係しているという衝撃の事実を告げる…。


 一体、レティの身に何が起こったのか? そして、謎の犯罪組織の目的は何なのか? ドミニクは世界各国に散らばった馴染みの凄腕ドライバーを収集し、ヨーロッパの地に降り立つ。


 全ての謎を説き明かし、仲間を取り戻すために…。


 1作目の公開から12年。一体、誰がこれだけの長期シリーズになる事を予想しただろうか(笑)。今回は舞台もヨーロッパへと飛び出し、敵もアクションもグレードアップ。よくもまぁ、こんなこと考えつくわなというようなアクションの釣瓶打ちで楽しませてくれる。


 前述のように、この映画は3作目へと繋がるため、多少強引ともいえる辻褄合わせが描かれる。次の7作目が時系列的にどのような位置になるかは分からないが、2作目にも4作目にも繋がるようなものにしなければならない。このため1作目と4作目に出て、その4作目で爆死したとみられていたレティが、まるで「北斗の拳」のユリアのような復活を遂げるのだ。


 まぁ、爆発の影響で以前の記憶が全部吹っ飛んでしまう設定もどうか? とは思うのだが、逆に彼女の心が展開次第で何色にでも染まるようになったため、後半に起こるドラマがちゃんとした意味を持つ事になるのである。


 また、仕方がないことだが、この辻褄合わせの影響(?)で、あるキャラクターが非業の死を遂げる。その航空機アクションも見ものではあるが…。一体どんだけ長い滑走路やねん(笑)。


 そして、このシリーズではお約束になるのだが、予告編では“最終決戦”をうたっておきながら、ラストシーンでしっかり続編フラグが立てられた。「3」に繋がるためラストはあの場所。そこに何故かアドレナリン出まくり(笑)なアイツが…。もしかして、次回作は2大カーアクション映画の融合なのか? 監督が変わってしまうらしいから、その辺はチョイと心配だが、全米では来年公開予定の次回作を、ワクワクしながら待つとしよう。


私の評価…☆☆☆★

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2013年8月 7日 (水)

モンスターズ・ユニバーシティ 3D

モンスターズ・ユニバーシティ
モンスターズ・ユニバーシティ
劇場:TOHOシネマズ二条
監督:ダン・スキャンロン
製作総指揮:ジョン・ラセター
音楽:ランディ・ニューマン
声の出演(カッコ内は日本語吹き替え版の声優):マイク・ワゾウスキー…ビリー・クリスタル(田中裕二)、ジェームズ・P・サリヴァン…ジョン・グッドマン(石塚英彦)、カレン・グレーブス先生…ボニー・ハント(柳原可奈子)、ランドール・ボッグス…スティーヴ・ブシェミ(青山穣)、ディーン・ハード・スクラブル学長…ヘレン・ミレン(一柳みる) 他

〈同時上映〉短編映画「ブルー・アンブレラ」


 《ちょっぴりビターな友情物語》


 2001年に公開された「モンスターズ・インク」の前日譚。サリーとマイクの大学時代を舞台にした冒険を描く。


 ポジティブなマイクは、誰よりも人間の子供を怖がらせられるモンスターを目指しているのに周囲と比べて身体が小さく可愛らしいルックスをしていることに悩んでいた。エリートモンスターになるべく憧れの大学モンスターズ・ユニバーシティに進学するも、大きな体格のサリーをはじめ将来有望なモンスターが多く通っていた…。


 これまでピクサー製作の映画には続編ものはあったが、ディズニーアニメの続編が劇場公開されることは滅多に無く、しかも前日譚というのは非常に珍しい。


 “怖がらせ屋”になりたいという夢と希望を持って、大学に進学するマイク。だが、前作を観た人ならマイクは怖がらせ屋にはならない事は分かっている。ということで、本作では大学で初めて出会うマイクとサリーの友情物語を中心に、最初は性格の違いから互いに反発しあっていた2人が、どうやって固い絆を結んでいくかが描かれるわけだが、W主役扱いだった前作とは違い今作はマイクが主役という事で、サリーのエピソードがかなり大雑把になってしまった。


 これまでは夢を諦めない大切さを描いてきたディズニー/ピクサー作品。でもこの前日譚では夢と現実の差を知らせる、ちょっぴりビターな風味が加わり、基本ハッピーエンドがお約束のディズニーアニメだが、この映画は完全なハッピーエンドでは終わらず、学生時代を経験した大人なら恐らく誰もが感じるほろ苦いものとなっている。


 と、いうわけでこの映画は一応子供も楽しめるが、どちらかといえば大人向きの映画といっていい。ちなみにエンドクレジット後にはちょっとした本編での伏線の回収がある。実に芸が細かい(笑)。絶対に最後まで席を立たないように。


私の評価…☆☆☆★

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2013年8月 4日 (日)

アルゴ

アルゴ
劇場:小倉昭和館
監督:ベン・アフレック
音楽:アレクサンドル・デスプラ
原作:アントニオ・J・メンデス「The Master of Disguise」、ジョシュア・バーマン「The Great Escape」
出演:ベン・アフレック、ブライアン・クランストン、アラン・アーキン、ジョン・グットマン、ヴィクター・ガーバー、テイト・ドノヴァン、クレア・デュヴァル、クリストファー・デナム、スクート・マクネイリー、ケリー・ビシェ、ロリー・コクレーン、カイル・チャンドラー、クリス・メッシーナ、ジェリコ・イヴァネク、タイタス・ウェリヴァー、ボブ・ガントン 他


 《昨年に続き、映画“愛”を描いたものがアカデミー作品賞に》


 この映画は、1979年に起きたイランアメリカ大使館人質事件を題材にしたもので、第85回アカデミー賞作品賞を受賞したものである。


 1974年11月4日、イランの過激派がアメリカ大使館を占拠。混乱のなか6人が脱出、カナダ大使の私邸に逃げ込む。残る52人の大使館員を人質にとったイラン側の要求は、ガンの治療のためアメリカに入国した前国王パーレビの引き渡しだった。大使館員の写真付き名簿は、衝撃直前にシュレッダーにかけられたが、イラン革命防衛隊は、子供を使って断片をつなぎ合わせていた。名簿が復元されれば6人の脱出がバレ、捕まれば公開処刑されるのは間違いない。


 国務省はCIAに応援を要請、人質奪還のプロ、トニー・メンデス(ベン・アフレック)が呼ばれる。トニーが閃いたのは、ウソの映画を企画し、6人をロケハンに来たカナダの映画クルーに仕立て上げ、出国させるという作戦。トニーの知人の特殊メイクの第一人者で、「猿の惑星」でアカデミー賞に輝いたジョン・チェンバース(ジョン・グットマン)が協力を快諾する。大物プロデューサーのレスター(アラン・アーキン)もチームに参加、まずは彼の自宅に山積みのボツ脚本から、イランでの撮影に相応しいSFアドベンチャー「アルゴ」が選ばれた。事務所を開き、名刺とポスターを作り、マスコミを集めての大々的な記者発表が開かれ、本物さながらのプロジェクトが始まったのだ…。


 一方、イランでは200人以上の民兵が空港を監視し、カナダ大使邸のイラン人メイドは、「カナダからの客」が一度も外出しないことに不審を抱く。1980年1月25日、ついにハリウッド作戦決行、トニーはプロデューサー補に扮し、イランへと向かう。文化・イスラム指導省に出向き、撮影許可を申請した後、カナダ大使邸に入るトニー。ところが、6人はトニーに「あまりにバカげている」「映画人のフリなどムリだ」と口々に反発する。だが、選択肢はない。迷いながらもトニーが作ったそれぞれの役柄を暗記する6人。


 翌日、予期せぬ事態が発生する。指導者がロケハンを許可、ハザールで担当者と面会せよというのだ。怖気づく大使館員を「見捨てたことは一度もない」と説得し、連れ出すトニー。ハザールでは民衆に囲まれ、一時は暴動寸前となるが、何とか乗り切った。翌日の出国に向けて、空港での動きを練習する6人。その時、トニーの上司オドネル(ブライアン・クランストン)から緊急電話が入る。「計画は中止、帰国しろ」。軍による大使館の人質奪還作戦が決定、航空券は取り消され、ハリウッドの事務所は閉鎖、トニーは6人に黙ったまま、そっとホテルへ帰る。


 このままでは6人は見殺しだ…翌朝、「僕が責任を負う。出国させる」と上司に宣言、一方的に電話を切るトニー。作戦を復活させるにはカーター大統領の承認が必要だ。空港には最大難関の革命防衛隊が! さらにあと数分で、大使館名簿の写真が復元されようとしていた! 果たして、6人とトニーの運命は…?


 毎年8月の1か月間は、仕事で度々北九州の小倉に行くので、確か去年もこの地域の映画館で観た映画の感想を書いていると思うが、今年はロードショー時に観られなかった映画が、たまたまこの「小倉昭和館」でかかっていたので、観に行った。まだまだ観ているのに感想を書いていない映画がたくさんあるのだが、とりあえずこれを先に書いておく。


 イラン革命の混乱の中、本来ならば治外法権である筈の大使館に過激派学生たちが傾れ込み、大使館員とその家族ら52人を人質に、実に444日間に渡って占拠したアメリカ大使館人質事件。全世界を震撼させたこの大事件の裏で、大使館の外で孤立してしまった6人の外交官を脱出させたという、知られざる秘話を描く。


 実はこの話、公にはあまり知られていない。というのもクリントン政権時に機密指定が解除されるまで、18年も闇に伏せられていたもので、恐らく多少は脚色されているのだろうが、その奪還作戦というものが、実にアメリカらしくて面白い。1970年代の雰囲気を出すために、冒頭のワーナーのロゴを、当時使われていたものにしているし、撮影したフィルムを一度半分のサイズにして、その半分を再度拡大することで粒子を強調(つまり画像を荒くさせる)し、時代を感じさせるという、なかなか小技の効いたことをやってくれているのだ。


 奇想天外な作戦から緊迫感溢れるクライマックスのサスペンスまで、目が離せない本作。革命軍の情勢に関してはアメリカ側は殆ど知り得ないだろうから、革命軍との攻防は映画的な演出が入っているだろうが、この時から今にまで続くアメリカとイスラムとの関係を現すには、十分説得力のある場面である。


 ちなみに昨年は映画“愛”に満ち溢れた2本の映画がアカデミー賞を席巻した(「アーティスト」、「ヒューゴの不思議な発明」)が、本作もある意味、映画“愛”を描いたもの。70年代といえば、映画史に残る名作SF映画が量産された時代でもある。映画ファンをニンマリさせるような台詞も出てくるので、40代以上の映画ファンなら、そういった娯楽的な面でも楽しめる。


私の評価…☆☆☆☆☆

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2013年8月 1日 (木)

真夏の方程式

真夏の方程式
真夏の方程式
劇場:TOHOシネマズ二条
監督:西谷弘
脚本:福田靖
原作:東野圭吾「真夏の方程式」
音楽:管野祐悟、福山雅治
テーマ曲:福山雅治「vs.2013 〜知覚と快楽の螺旋〜」
出演:福山雅治、吉高由里子、北村一輝、杏、前田吟、風吹ジュン、白竜、塩見三省、山崎光、西田尚美、田中哲司、永島敏行、根岸季衣、神保悟志、綾田俊樹、豊島花、青木珠菜 他


 《キャスト変更で、コンビの凸凹がより明確に》


 テレビドラマ「ガリレオ」シリーズ、約5年ぶりの劇場版第2作。主人公の相棒となる刑事役は、前作の柴咲コウから吉高由里子に交代。連動して製作されたテレビシリーズ第2期も、この変更された設定が引き継がれた。


 手付かずの美しい海が残る玻璃ヶ浦〈はりがうら〉。その海底鉱物資源の開発計画の説明会に招かれた湯川学(福山雅治)は、旅館「緑岩荘」に滞在することになる。海底資源の開発計画を推進する企業側と、環境保護グループが意見を衝突させていた。地元の住民も賛成派・反対派に分かれ、町全体がこの問題に大きく揺れ動いていたのだ。


 開発計画の説明会にアドバイザーとして招かれた湯川は、川畑夫妻(前田吟・風吹ジュン)と、その一人娘・成実(杏)が細々と経営する旅館に宿泊する。そこで湯川は一人の少年・柄崎恭平(山崎光)と出会う。恭平は親の都合で、夏休みを伯母一家が経営する旅館で過ごすことになった小学生。普段は子供に近づかれただけでジンマシンが出るほどの子供嫌いな湯川だが、なぜか恭平に対しては拒絶反応があらわれなかったのだ…。


 翌朝、堤防下の岩場で男性の変死体が発見された。男は旅館のもう一人の宿泊客・塚原正次(塩見三省)で、引退した元警視庁捜査一課の刑事だった。塚原は、16年前に起きたホステス殺人事件の犯人で、服役後に消息を絶った仙波英俊(白竜)という男を探していたらしい。県警は塚原の死を堤防からの転落事故として処理しようとするが、それでは説明のつかない不可解な点がいくつもあった。現地入りした捜査一課の岸谷美砂(吉高由里子)は、さっそく湯川に協力を依頼する。いつものように断られる事を予想していたのだが、なぜか今回湯川は積極的に捜査に関わろうとしている。何が彼をそうさせるのか、疑問をおぼえる岸谷。これは事故か、殺人か?


 思わぬ形で事件に巻き込まれていく恭平、環境保護活動にのめり込む成実、観光業が振るわず廃業を考えている川畑夫妻は何故か事件に無関心を装う…。


 死んだ塚原はなぜこの町にやってきたのか。事件を巡る複雑な因縁が、次第に明らかになっていく。全ては、ある人物の秘められた「過去」と「嘘」から始まっていたのだ。罪を犯したには誰か。そして湯川が気付いてしまった、哀しき事件の真相とは…。


 前作同様、テレビシリーズとは一味違う演出で、テレビ版を未見の人でも楽しめるような工夫がされている。テレビ版では見せ場を作るために、突然閃いた湯川がテーマ曲にのせて数式を書いたり、相棒役岸谷のキャラが賑やかだったりと、軽いコメディタッチで描かれる事が多かったが、映画版では岸谷のキャラも随分おとなしく、テレビ版のコメディ要員渡辺いっけいとハライチ・澤部が一切登場しない。ほぼ全編シリアスな展開を見せる。


 そのかわり、普段は子供が苦手な筈の湯川と、偶然出会う少年・恭平とのやり取りが微笑ましい。夏休みの宿題である自由研究として、ペットボトルロケットを作って飛ばすシーンは、まるで本当の親子のようだし、後に大人の策略によって、知らず知らずの内に犯罪に加担させられてしまう部分、つまり陽と陰との対比になっている。全ての事が判明してしまうラストは前作以上にあまりにも切ない。


 ところで、“陰”と“陽”といえば、このテレビ版第2シリーズが始まって、キャストの一部変更が発表された時、特にヒロイン役が柴咲コウ→吉高由里子に変わった事がネット等で物議をよんでいたが、僕はこのキャスティング変更は、ドラマとしてはいい方向に出ていると思う。別に柴咲コウが嫌いなワケではないし、かといって吉高由里子が特別好きだというワケでもないが、こういうドラマや映画の“相棒もの”は、洋邦問わず組むパートナーの性格などが正反対であればあるほど、凸凹コンビとして成り立ち、ドラマそのものが面白くなるのである。刑事もので例をあげるなら、「相棒」の杉下右京(水谷豊)&亀山薫(寺脇康文)、洋画だと「リーサル・ウェポン」シリーズのリッグス(メル・ギブソン)&マータフ(ダニー・グローヴァー)が好例といえよう(どっちが“陰”でどっちが“陽”かは皆さん分かりますよね)。本作の場合は、湯川教授はもちろん“陰”、ということはパートナーには“陽”の性格を持たせた方がいいわけで、柴咲に比べ明るいキャラクターを演じる
ことが多い吉高へのチェンジは、湯川との“陰”と“陽”の差がよりはっきりと出た。ただ、柴咲演じる内海刑事も別に不評だったわけではないのだから、交代の仕方やタイミングはマズかったように思うのだが、皆さんはどう感じますか?


私の評価…☆☆☆☆

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