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2014年4月12日 (土)

〈新・午前十時の映画祭〉さらば、わが愛/覇王別姫

〈新・午前十時の映画祭〉さらば、わが愛/覇王別姫
劇場:TOHOシネマズ二条
監督:陳凱歌
原作・脚本:李碧華
音楽:趙季平
出演:張國榮、張豊毅、鞏俐、呂齊、葛優、黄斐、童弟、英達、智一桐、馬明威、尹治、費洋、趙海龍、楊永超、李丹、李春、雷漢、呉大維、蒋麗 他


 《時代に翻弄される京劇俳優たちの悲哀》


 四面楚歌で有名な項羽と虞美人を描いた京劇作品である「覇王別姫」を題材に、日中戦争や文化大革命などを背景として時代に翻弄される2人の京劇俳優の目を通し、近代中国の50年を描く。


 1925年、北京。娼婦の母親に連れられ、孤児や貧民の子供たちが集まる京劇の養成所に入った9歳の少年・小豆子。新入りの小豆子は他の子供たちから虐められたが、彼を弟のように庇ったのは小石頭だけだった。2人は成長し、女性的な小豆子は女役に、男性的な小石頭は男役に決められる。小豆子は「女になれ」と老師爺(黄斐=ファン・フェイ)に躾けられ数えきれないほど殴られた。彼らは演技に磨きをかけ、小石頭は段小樓(張豊毅=チャン・フォンイー)、小豆子は程蝶衣(張國榮=レスリー・チャン)と芸名を改め、京劇「覇王別姫」のコンビとして人気を博す。小樓はある日、しつこい客に絡まれていた娼婦の菊仙(鞏俐=コン・リー)を助けたことをきっかけに、彼女と結婚する。少年時代より小樓に仄かな恋情を覚えていた蝶衣は2度と共演はしないと捨て台詞を吐いて去る。その日北京は日本軍に占領された。ある日小樓は楽屋で騒動を起こし連行されてしまう。菊仙は日本側に取り入ってもらえるのだったら小樓と別れてもいいと蝶衣に告げるが、彼の協力で釈放された小樓は日本のイヌと彼を罵り菊仙を連れて去る。深く傷ついた蝶衣はアヘンに溺れる。そんなことがありながらも2人は和解へと進む。その後老師爺はこの世を去り、日本軍の敗退で抗日戦争は終わる。49年、共産党政権樹立。蝶衣と小樓は再び舞台に立つが、京劇は新しい革命思想に沿うよう変革を求められていた。変革に懐疑的な蝶衣は小四(雷漢=レイ・ハン)に批判され、そればかりか彼に「覇王別姫」の虞姫役を奪われてしまう。ショックを受けた蝶衣は芝居を辞めてしまう。66年、文化大革命。共産党の厳しい政治的圧力を受け、小樓は蝶衣の過去の罪を摘発せよと強制される。小樓はそれに屈するが、同時に彼も激しく批判され、娼婦だった菊仙など愛していないと言ってしまう。彼の言葉を聞いた菊仙は自殺してしまう。77年、蝶衣と小樓は無人の体育館に赴き、11年ぶりに2人だけで最後の「覇王別姫」を演じる。舞い終わった時、蝶衣は自らの命を断った…。


 この映画は何度かリバイバル上映されているので、あまり古さを感じないが、公開から20年が経った。実は、今年の初めにも京都シネマで上映されたのだが、1週間限定で真っ昼間に1回だけという、サラリーマンにはどうしようもない時間(笑)にやっていたため、なかなか観ることができず、今回仕事が休みの日にやっと観ることができた。やっぱりこういう映画の上映(ついでに言えば大阪での演劇の上演も)は、最低2週間はやってほしい。


 有名な京劇の演目が基になっているため、京劇の場面が所々にあるのだが、この舞台の美しさは圧巻だ。この映画の基になった「覇王別姫」は、秦の始皇帝が没した後の天下を狙う劉邦と項羽の戦いを題材にとり、劉邦軍に囲まれて決戦を前にした項羽と、彼の妾・虞姫(虞美人)の物語で、京劇の有名な女形・梅蘭芳(メイ・ランファン)のために書き下ろされた芝居である。監督の陳凱歌(=チェン・カイコー)は、後にこの俳優を主人公に据え、日中韓のスターが共演した「花の生涯 梅蘭芳」(2008年)という映画を撮るのだが、この監督の映像美は文句のつけようが無く素晴らしい。


 3時間近い大長編ではあるが、日中戦争や文化大革命といった中国の大動乱期を描いているため、見せ場もたくさんあって全く飽きさせないし、少しでもその時代の事を調べておけば、なお楽しめると思う。


 メインキャストの3人は、本作以降も華々しく活躍して行く。コン・リーは、「SAYURI」(2005年)でハリウッド・デビューも果たし、今やアジアだけでなく世界で活躍する女優である。チャン・フォンイーも、ジョン・ウー監督の大ヒット作「レッド・クリフ」(2008〜2009)で悪役の曹操を貫禄たっぷりに演じていたのは、記憶に新しいところだ。しかし何と言っても、この映画の最大の魅力は蝶衣を演じるレスリー・チャンにあるのではないか。当初、この役は京劇の経験があるジャッキー・チェンやジョン・ローンがオファーされていたが、出演する作品の毛色の違いなどを理由に断ったため、レスリーに廻ってきたものである。ただ、レスリーは京劇の経験が無かったため、舞いを踊る場面のみ本職の京劇俳優が吹き替えているのだが、それでも美しいのだ。あまり直接的な表現はされていないが、男を愛し嫉妬する果てに身をも滅ぼしていく蝶衣の哀しい姿は、同じく当時、バイ・セクシュアルや鬱病の噂があり、2003年に香港最高級ホテルから飛び
降り自殺したレスリー自身と、どうしても重なってしまう。


 ちなみに、この映画はその後、2008年に日本で舞台化された。この時の小樓役は遠藤憲一だったが、蝶衣を東山紀之、菊仙を木村佳乃が演じていた。この2人はこの共演が縁で後に結婚する… いやはや運命とは、凄いものだ。


私の評価…☆☆☆☆★

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