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2014年9月21日 (日)

〔舞台〕ミス・サイゴン 新演出版

〔舞台〕ミス・サイゴン 新演出版
劇場:大阪・フェスティバルホール
脚本・音楽:クロード=ミッシェル・シェーンベルク
原作:ジャコモ・プッチーニのオペラ「蝶々夫人」
演出:ローレンス・コナー
翻訳:信子アルベリー
訳詞:岩谷時子
出演(自分が観た回のキャスト):エンジニア…駒田一、キム…知念里奈、クリス…上野哲也、ジョン…上原理生、エレン…木村花代、トゥイ…神田恭兵、ジジ…池谷祐子 他


 《ベトナム戦争が残した、暗い影》


 ミュージカル「ミス・サイゴン」といえば、1989年9月にロンドンのウエストエンドで初演を迎え、以来25年にわたって世界中で上演されてきた人気演目である。今回上演されるのは、2012年と13年にウエストエンドで上演された新演出版に、さらに改訂を施し今年、25周年記念公演としてウエストエンドで上演されたバージョンの日本人キャスト版である。


 ベトナム戦争末期。爆撃で故郷の村と両親を失った少女キムは、ナイトクラブを営むエンジニアに拾われる。エンジニアやクラブの女たちは、アメリカへ渡り豊かに暮らす夢を見ながら、G.I.相手に媚を売って生きていた。戸惑いながらも店に入るキム。初めての客は、長引く戦争の中で虚無感に苛まれる米兵クリスだった。一夜を共にした二人は互いの中に救いを見出だし、恋に落ちる。幸せな二人の前に突然、キムの婚約者であるトゥイが現れた。ベトコンのトゥイはキムが敵兵と一緒にいることに激怒し、アメリカの敗北は近いと言い捨てて去っていく。クリスはキムを国へ連れ帰ると決め、二人は世界が終わろうと愛は続くと誓い合う。だが、サイゴン陥落の時はすぐそこに迫っていた…。


 一年前、ほぼ同じスタッフによる「レ・ミゼラブル」の新演出版を鑑賞した時から、既に次の年このミュージカルが上演される事が決まっており、その時から楽しみにしていた。いやぁ、一年経つのって、ホント、早いわぁ(笑)。残念ながら、市村さん(病気降板により代役=筧利夫さんに)の回はこちらのスケジュールの都合上チケットを取る事ができず、じゃあヒロイン役が知念里奈ちゃんの回を取ろうか、いうことで上記キャストの回を観たわけである。


 物語はプッチーニのオペラ「蝶々夫人」を基に作られていて、舞台は明治30年代後半の長崎ではなくベトナム戦争末期のサイゴンに、没落藩士令嬢と米海軍士官との悲劇はベトナム人少女娼婦と米大使館の軍属運転手の悲恋へと置き換えられている。一応、主役はエンジニアであるが、中心となるのは少女娼婦キムと運転手クリスなので、エンジニアは狂言回し的な役割だ。


 舞台版「レ・ミゼラブル」は映画化もされたので、この「ミス・サイゴン」も映画化されたらいいなと、観る前は思っていたが、主役もヒロインも敵役も死んだのに、ラストにヒロインの娘の結婚という“希望の光”を描き、「民衆の歌」を高らかに歌い上げて華々しく終わる「レ・ミゼラブル」に対して、この「ミス・サイゴン」は、戦争で引き裂かれた恋の挙げ句、ヒロインの自決でそのまま終幕という、とんでもなく暗いラストなのだ。舞台ならカーテンコールで明るい雰囲気にすることができるが、映画だとそうはいかないだろう。「ミス・サイゴン」より後に作られた「レ・ミゼラブル」の方が先に映画化されるのもわかるような気がした。


 僕はこのオリジナル版は観ていないが、オリジナル版とどこが変わったかというと、どうやら大きく変わったのは、人々を救出するために飛んでくるヘリコプターの演出と、「アメリカン・ドリーム」の場面らしい。どうやら、上から釣り下げられた娼館のセットの裏側がヘリコプターになっているようだが、照明の当て方によってそのヘリコプターが、爆音と共に舞台に近づいてくるように見える様は圧巻であった。また「レ・ミゼラブル」同様、セリフの殆どが歌になっているのがこの作品の特徴の1つなのだが、今回オリジナル版とは歌詞が変わっており、その関係で岩谷時子さんが訳されていた日本語の訳詞も、岩谷さんは既に他界されているので、オリジナル版の日本語訳詞製作時に、共同で作業をされていた方が手直しをされているということで、よりドラマ性が重視されているようである。


 来年は、第二次世界大戦終戦から70年、ベトナム戦争終結から40年、朝鮮戦争は開戦から65年という、ある意味大きな節目を迎える。それぞれその時の世相の違いというものはあるだろうが、改めて見つめ直し考えてみるのも、いいのではないだろうか。


私の評価…☆☆☆☆★

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