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2018年7月

2018年7月29日 (日)

52Hzのラヴソング

52Hzのラヴソング
劇場:京都シネマ
監督・脚本:魏徳聖
共同脚本:游文興、蘇達
音楽:李正帆、李王若涵
出演:林忠諭、荘鵑瑛、スミン、米非、林慶台、趙詠華、李千娜(特別出演)、張榕容(特別出演)、范逸臣(特別出演)、田中千絵 他


  〈底抜けに楽しい台湾製恋愛ミュージカル〉


 「セデック・バレ」のウェイ・ダーションが、台湾の人気ミュージシャンたちを出演者に起用したラブストーリー。


 バレンタインデー当日。花店に勤めるシャオシンは、商売繁盛のかき入れ時だが、一緒に過ごす彼氏がいない。パン屋で働く孤独な職人のシャオアンは、片想いのレイレイにプレゼントする特別なチョコレートを注文品に紛れ込ませて作ってしまう。そんな2人がそれぞれに配達をしていたところ、自動車とバイクで接触事故を起こしてしまう。やむなく一台のバイクで一緒に配達をする事に。一方、10 年間同棲しているレイレイとダーハーは、別れとプロポーズという全く異なる思惑を抱いて、バレンタインデーの朝を迎えるが……。


 本作はちょっと珍しい、台湾製のミュージカル映画。一見、牧歌的で楽しい恋愛映画だが、「セディック・バレ」のウェイ・ダーション監督だけあって、人物設定等随所に、台湾に対する監督の歴史観を垣間見る事ができる。ヒロインと相手役の年齢が30代前半という事は、戒厳令下の台湾を知らない世代、つまり国民党独裁時代を経験せずに大人になった彼らには、自らのアイデンティティを問う民族や政治の問題は遠い世界の話なのである。その代わりにこの映画では、恋愛こそが彼らにとっての価値観、ということなのだ。


 因みに、このちょっと不思議な映画のタイトルは、世界に1頭だけいるとされる、“52Hzの声を持つクジラ”からきている。これは通常クジラ類は、15~25Hzの周波数で仲間と交信するのだが、それとは全く異なる周波数を持つものが1頭だけいて、しかしその姿は確認されず、音の検出だけでその個体はいるのだろうという、海洋学者の推測から付けられたものなのだ。これをこの映画のストーリーに当てはめて、“自分の好きな人に恋の歌が届かない”という切なさや、“でもその歌が届く人が1人でもいたら…”という、なんともロマンチックな意味あいも醸し出す。


 まぁ、あっちこっちで愛を囁いて、台湾映画ではあまり見かけない“百合もの”もちょっと描いたり、ツッコミどころも結構多いのだが、それでもみんなハッピーになれる底抜けに楽しい映画である。


私の評価…☆☆☆★

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2018年7月26日 (木)

ワンダー 君は太陽

ワンダー 君は太陽
ワンダー 君は太陽
劇場:MOVIX京都
監督・脚本:スティーブン・チョボスキー
共同脚本:ジャック・ソーン、スティーヴン・コンラッド
原作:R・J・パラシオ「ワンダー Wonder」
製作:トッド・リーバーマン、デヴィッド・ホバーマン
製作総指揮:R・J・パラシオ、ジェフ・スコール、ロバート・ケッセル、アレクサンダー・ヤング
音楽:マーセロ・ザーヴォス
出演:ジェイコブ・トレンブレイ、ジュリア・ロバーツ、オーウェン・ウィルソン、マンディ・パティンキン、ダヴィード・ディグス、イザベラ・ヴィドヴィッチ、ダニエル・ローズ・ラッセル、ナジ・ジーター、ノア・ジュプ、ミリー・デイヴィス、ブライス・ガイザー、エル・マッキノン、クリスタル・ロウ、ソニア・ブラガ、アリ・リーバート、カイル・ハリソン・ブライトコフ、ウィリアム・ディッキンソン、ジェームズ・ヒューズ、タイ・コンシリオ 他


  〈決してお涙頂戴ものではないが、心が温まる〉


 全世界で800万部を超えるベストセラーとなったR・J・パラシオの小説を、「ウォールフラワー」のスティーヴン・チョボスキー監督が映画化した人間ドラマ。


 10歳のオギー・プルマン(ジェイコブ・トレンブレイ)は、「スター・ウォーズ」が大好きで、宇宙飛行士に憧れる男の子。だが彼は、普通の子とは少し違う見た目をしていた。遺伝子の疾患で、他の人とは異なる顔で生まれてきたのだ。そのため、27回もの手術を受け、一度も学校に通わないまま自宅学習を続けてきた。ところが、母親のイザベル(ジュリア・ロバーツ)は、“まだ早い”という夫のネート(オーウェン・ウィルソン)の反対を押し切って、オギーを5年生の初日から学校に通わせることを決意する。夏休みの間、イザベルに連れられて校長先生に会いに行くオギー。トゥシュマン校長先生(マンディ・パティンキン)の“おケツ校長だ”という自己紹介に、オギーの緊張はややほぐれる。だが、“生徒が学校を案内する”と聞き、動揺。 紹介されたのは、ジャック・ウィル(ノア・ジュプ)、ジュリアン(ブライス・カイザー)、シャーロット(エル・マッキノン)の3人。いかにもお金持ちのジュリアンは、“その顔は?”と聞いてくる。毅然とした態度を取るオギーだったが、帰宅後は元気がない。イヤならやめてもいいと言いかけるイザベルに、“大丈夫、僕は行きたい”と答え、学校に通い始めるが…。


 映画では病名が明かされていないが、これは“トリーチャー・コリンズ症候群”という、約5万人に1人の割合で生まれる遺伝子疾患を持った子供の奮闘記。


 この疾患の特徴は鼻か耳又はその両方が不形成、或いは欠損して生まれてくることで、口角は上がり(稀に口唇口蓋裂=口裂けを発症している場合あり)目尻も垂れ下がりといった顔になる。外見的に目立つ事で、どうしても差別されてしまうのだが、映画では周りの人と変わらない生活をさせてやりたいという親の希望で、一般の学校に編入させられる。


 この映画、表面的には障がいを持つ子供の苦悩や葛藤ばかりに目が行きがちだが、普通の生活を送らせようとする事によって、家族やその周りの友人との問題も浮き彫りにしていくのが見所。特に、弟に優しいお姉ちゃんが、両親に構って貰えない寂しさから孤独感を募らせ、悪いことではないんだけど突拍子もない行動に走ってしまう場面は、共感できる人も多いだろう。


 因みに、トリーチャー・コリンズ症候群については、1年半程前に、某放送局のドキュメンタリー番組で、この疾患で生まれてきた日本人の女性が、地元の行政機関で働けるようになるまでを追ったものが放送されており、たまたまだが自分も本放送を観ている。どちらを観ていても思ったのは、どんなに辛い時でも、勇気と諦めない気持ちがあれば、苦難を乗り越えることができるということ。


 実際にアメリカでは五万人に1人がこの疾患に冒されていて、原作小説とこの映画は、患者やその親たちに勇気を与えているという。人と人の繋がりが薄くなったといわれる今、こういう映画こそ、恋人や親子で観るべき映画なのではないだろうか。


私の評価…☆☆☆☆★

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2018年7月13日 (金)

家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。

家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。
家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。
劇場:MOVIX京都
監督:李闘士男
脚本:坪田文
原作:(作 …K.Kajunsky / 漫画…ichida)「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」
製作:宮前泰志
音楽:安達練
主題歌:チャットモンチー「I Laugh You」
出演:榮倉奈々、安田顕、大谷亮平、野々すみ花、浅野和之、品川徹、螢雪次朗 他


  〈微笑ましい話だが、ドラマは単調〉


 「Yahoo!知恵袋」に投稿されるや話題になった、妻の奇妙な行動の理由を探る男性の質問を基にしたラブストーリー。


 結婚3年目のサラリーマンのじゅん(安田顕)が仕事から帰宅すると、玄関で妻のちえ(榮倉奈々)が血を流して倒れていた。じゅんはあわてて介抱するが、その血はケチャップで、ちえは死んだふりをしていただけだった。理由は何も言わず、ただ笑うだけのちえ。それ以来、ワニに食われる、銃で撃たれる、頭に矢が刺さっているなど、毎日のように死んだふりをする妻に、じゅんは呆れながらも徐々に不安を覚えるようになっていく…。


 何故、妻が死んだふりをするかという理由は、意外にも普遍的なものだったが、笑わせて、ちょっぴり泣かせる映画である。榮倉奈々が見せる渾身の“死んだふり”15パターンが楽しい。


 妻の突発的な行動を発端にして、「幸せな結婚とは何か?」を描いていくのだが、さすがに同じことの繰り返しでは話が殆ど進まず、物語としては単調になる。元がコミュニティサイトへの投稿なので、仕方ない面もあるのだが、それならもう少しサイドストーリーを充実させたら良かったのかもしれない。因みに、じゅんの同僚を大谷亮平が演じているが、これは小出恵介が演じるはずだったもの。実はほぼ撮り終えた後に不祥事が発覚して降板、撮り直しをしたものである。この影響で本来なら4月のGW向けに公開予定だったものが、約2か月遅れての公開となった。恐らく内容も、若干の路線変更があったはずで、もし予定通りのスケジュールを通していれば、全く違った印象をもったものになっていただろう。


私の評価…☆☆☆

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2018年7月12日 (木)

羊と鋼の森

羊と鋼の森
羊と鋼の森
劇場:TOHOシネマズ二条
監督:橋本光二郎
脚本:金子ありさ
原作:宮下奈都「羊と鋼の森」
製作:市川南
製作総指揮:山内章弘
音楽:世武裕子
エンディング・テーマ:久石譲×辻井伸行「The Dream of the Lambs」
出演:山崎賢人、鈴木亮平、上白石萌音、上白石萌歌、堀内敬子、仲里依紗、城田優、森永悠希、佐野勇斗、光石研、吉行和子、三浦友和 他


  〈調律師とピアニスト達の心の葛藤と成長〉


 2016年の第13回本屋大賞に輝くなど、数々の賞を受賞した宮下奈都の同名小説を、山崎賢人主演で映画化した青春ストーリー。上白石萌音と上白石萌歌が姉妹役で映画初共演。


 北海道の田舎で育った外村直樹(山崎賢人)は、高校でピアノの調律師・板鳥宗一郎(三浦友和)と出会う。彼の調律したピアノの音に生まれ故郷と同じ“森の匂い”を感じた外村は、調律の仕事に魅せられ、その世界で生きていこうと決意。専門学校に通ったのち、板鳥のいる楽器店で調律師として働き始める。いちばん年齢が近く兄のような存在である先輩・柳(鈴木亮平)に付きながら、調律師としての道を歩み始めた外村は、ある日、高校生姉妹、和音(上白石萌音)と由仁(上白石萌歌)に出会う。柳の調律したピアノを二人が弾くと、和音の音は端正で艶やかな音を奏で、由仁は明るく弾むような音色になるのだった。ときに迷い、悩みながらも、ピアノに関わる多くの人に支えられ、外村は調律師として人として逞しく成長していく…。


 これはピアノに関わる人は絶対に観に行くべき映画ではないか。主人公に感情移入するよりも、ピアノと、それを弾く人の人生というか、歴史を追っていくもので、そこに調律師が関わることで、弾く人の人生にどのような変化が訪れるのかが見所だと思う。調律ひとつでそれが狂ったり、また立ち直ったりということがあって、調律師自身もまた成長していくのである。主演の山崎賢人が嫌いなわけではないが(笑)、調律を依頼する側の上白石姉妹や森永悠希が、やっぱり良い。上白石姉妹は本人たちの指使いが写っているから、本当に弾いているのだろう(恐らく音色は劇伴担当の世武裕子によるアフレコだろうけど)。エンディング曲のみ演奏が辻井伸行なのだけど、ここだけ作曲が久石譲なので、なんだか「天空の城ラピュタ」の“君をのせて”に聴こえ(笑)、ジブリ映画を観たような気分になった。


私の評価…☆☆☆☆

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2018年7月 5日 (木)

29歳問題

29歳問題
劇場:京都シネマ
監督・脚本:キーレン・パン
音楽:アラン・ウォン、ジャネット・ユン
出演:クリッシー・チャウ、ジョイス・チェン、ベビージョン・チョイ、ベン・ヨン、ジャン・ラム、エレイン・チン、エリック・コット 他


  〈現在の生活に疲れたら、この1本!〉


 キーレン・パンが12年に渡って演じてきた一人芝居の舞台劇を、自らメガホンを取って映画化。


 香港。化粧品会社で働くヨックワン(クリッシー・チャウ)は、仕事のキャリアも順調、長年付き合っている彼氏もいて、公私ともに順風満帆なはずだった。だが、30歳の誕生日を一か月後に控えた頃、仕事のプレッシャーはキツくなり、彼氏ともすれ違いが重なって関係がギクシャクし、暗雲が垂れ込めてくる。実家の父は認知症で、何時だろうと関係なく“早く帰ってこい!”と電話をかけてくる始末。その上、借りていたマンションの部屋を家主が売りに出し、一方的に追い出されてしまう。急遽借りた部屋は、主の女性ティンロ(ジョイス・チェン)がパリ旅行で留守している間の仮住まいだった。やむなくそこで暮らし始めたヨックワンがある日、何気なく部屋にあった日記を手に取って開いてみると、ティンロが自分と同じ誕生日、同い年であることを知る。日記を読み進めたヨックワンは、気ままに暮らす楽天的なティンロのささやかながら幸せそうな日常に惹かれて行くが…。


 本作は中国で2005年に上演されヒットした舞台劇を映画化したもので、アラサー女子の抱える問題をテーマに描いたコメディである。日本で言うなら「東京タラレバ物語」(2017年の日テレ系ドラマ)が、雰囲気やネタが近いかなという感じなのだが、元が舞台劇だけに、最近はやり(?)の“第4の壁を破る”演出も多く、楽しませてくれる。ヒロインと同年代の女性なら、日本でも共感できる人は多いだろう。多分、日本でリメイクしても面白いのではないか。


 物語の軸になるのは、共にアラサー女子のヨックワンとティンロ。仕事バリバリのキャリア・ウーマンであるヨックワンに対して、極々普通のレコード店で働くティンロは、性格も対照的。2人は、あるちょっとしたことで、離れていながらも接点を持ち、その2人の生き方が交互に綴られていく。終盤、一見幸せそうなティンロにも、ある問題があることが分かるのだが、決して暗くは描いておらず、生きていく勇気を貰える映画であった。


私の評価…☆☆☆★

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