« ラ・ヨローナ~泣く女~ | トップページ | オーヴァーロード »

2019年7月11日 (木)

〈午前十時の映画祭10-FINAL〉 八甲田山[4Kデジタルリマスター版](1977年 4K版製作は2018年)

Img_06072019_185546_338_x_480_

Img_06072019_190131_338_x_480_

劇場:TOHOシネマズ二条
監督:森谷司郎
脚本:橋本忍
原作:新田次郎「八甲田山死の彷徨」
製作:橋本忍、野村芳太郎、田中友幸
製作総指揮:大角正、吉田繁暁、津嶋敬介
音楽:芥川也寸志
演奏:東京交響楽団
出演:高倉健、北大路欣也、加山雄三、栗原小巻、加賀まりこ、秋吉久美子、三國連太郎、緒形拳、森田健作、小林桂樹、藤岡琢也、島田正吾、丹波哲郎、前田吟、下條アトム、東野英心、竜崎勝、佐久間宏則、樋浦勉、浜田晃、玉川伊佐男、新克利、神山繁、大滝秀治、山谷初男、菅井きん、田崎潤、浜村純、花沢徳衛、加藤嘉 他


  〈自然の脅威と軍隊組織の不条理〉


 新田次郎の原作『八甲田山死の彷徨』をもとに、大部隊で自然を克服しようとする部隊と小数精鋭部隊で自然にさからわず、折り合いをつけようとする部隊の様子を冬の八甲田山を舞台に描く。


 「冬の八甲田山を歩いてみたいと思わないか」と友田旅団長(島田正吾)から声をかけられた二人の大尉、青森第五連隊の神田(北大路欣也)と弘前第三十一連隊の徳島(高倉健)は全身を硬直させた。日露戦争開戦を目前にした明治三十四年末。第四旅団指令部での会議で、露軍と戦うためには、雪、寒さについて寒地訓練が必要であると決り、冬の八甲田山がその場所に選ばれた。二人の大尉は責任の重さに慄然とした。雪中行軍は、双方が青森と弘前から出発、八甲田山ですれ違うという大筋で決った。年が明けて一月二十日。徳島隊は、わずか二十七名の編成部隊で弘前を出発。行軍計画は、徳島の意見が全面的に採用され隊員はみな雪になれている者が選ばれた。出発の日、徳島は神田に手紙を書いた。それは、我が隊が危険な状態な場合はぜひ援助を……というものであった。一方、神田大尉も小数精鋭部隊の編成をもうし出たが、大隊長山田少佐(三國連太郎)に拒否され二百十名という大部隊で青森を出発。神田の用意した案内人を山田がことわり、いつのまにか随行のはずの山田に隊の実権は移っていた。神田の部隊は、低気圧に襲われ、磁石が用をなさなくなり、白い闇の中に方向を失い、次第に隊列は乱れ、狂死するものさえではじめた。一方徳島の部隊は、女案内人(秋吉久美子)を先頭に風のリズムに合わせ、八甲田山に向って快調に進んでいた。体力があるうちに八甲田山へと先をいそいだ神田隊。耐寒訓練をしつつ八甲田山へ向った徳島隊。狂暴な自然を征服しようとする二百十名、自然と折り合いをつけながら進む二十七名。しかし八甲田山はそのどちらも拒否するかのように思われた。神田隊は次第にその人数が減りだし、辛うじて命を保った者は五十名でしかなかった。しかし、この残った者に対しても雪はとどめなく襲った。神田は、薄れゆく意識の中で徳島に逢いたいと思ったのだが…。


 約2時間50分、特撮ではないホンモノの映像に圧倒されっぱなしだった。この映画、当初は群馬の温泉地で撮影を予定していたらしいのだが、企画を進めていくうちに、

 

“これは現地で撮らないと、意図がしっかり伝わらないのでは”

 

ということになり、実際に事件が起きた場所に近い所で、それも同じような気象条件の元でロケをすることになったようで、そのあまりの過酷さに逃げ出してしまう役者もいたようである。

 

 

 ただ、小説や映画にする上では、史実をそのまま描くことは、どんな題材でも殆ど無い(理由は後述)。史実を調べてみると、映画になる上でかなり美化されている面もあって、複雑な思いになる。

 

 

 映画では青森隊と弘前隊は合同演習したように描かれているが、実際は双方の計画は個別に立案されたもので、たまたま実施期日が一致しただけである。両隊の間に事前の情報交換は無く、高倉健扮する徳島大尉(モデルは福島泰蔵大尉)と北大路欣也扮する神田大尉(同・神成文吉大尉)の間にも交流はなく、酒を酌み交わすシーン等は、全くの創作なのである。しかも、弘前隊は行軍途中で青森隊の遭難を知りながら、救助活動は行わなかったらしい。二次災害を防ぐために福島大尉が判断したようなのだが、同時に部下に箝口令を出していて、結果的に見捨てたのではとの意見もあるようだ。

 

 

 道案内をした村民に対し、弘前隊が敬礼で感謝の念を表すシーンも、創作であり、実際は別れ際に誰一人労いの言葉をかけること無く、豪雪の山中に見捨てたという。その結果7人の村民は自力で村には戻れたものの、中には凍傷にかかり、廃人同様になって若死にした人もいるらしい。

 

 

 “史実を映画化した”とうたっている映画でも、脚色された部分は必ずある。史実をそのまま描いてしまうとそれはドキュメンタリーとなり、エンターテインメントとドキュメンタリーは区別されてしまうからで、業界ではこの手法を“映画的な嘘”という人もいるのだが、たとえ創作であったとしても、当時の軍隊の理不尽さを描くのには充分であり、理不尽を通り越して、人命軽視で相当無茶苦茶なことをやってたんだなと思った。


私の評価…☆☆☆☆☆

ポチッとよろしく!

|

« ラ・ヨローナ~泣く女~ | トップページ | オーヴァーロード »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ラ・ヨローナ~泣く女~ | トップページ | オーヴァーロード »